兵士「んほぉ~、重装備の兵士が兜脱いだら女の子が出てくるシチュたまんねぇ~!」
女重装兵「ああ、敵はもう食糧が残り少ないはず。撤退するしかあるまい」
兵士「にしてもお前の鎧はゴツイな~、女なのに重装兵なんてよくやるよ」
女重装兵「だからこそ重装兵を志望したんだ。女だからといって甘く見るな」
兵士「へいへい。だけど今はそのゴツイ兜を脱いでもいいんじゃないか?」
女重装兵「それもそうだな」ガポッ
兵士「……!」
女重装兵「なんだ、ニヤニヤして気持ち悪い」
これ
女重装兵「今の?」
兵士「兜を外すところ」
女重装兵「別にかまわんが」ガポッ
兵士「……!」
女重装兵「?」
兵士「もう一回」
女重装兵「は!?」
兵士「頼む、もう一回!」
兵士「もう一回!」
女重装兵「またか」ガポッ
兵士「もっかい!」
女重装兵「……」ガポッ
兵士「もうい――」
女重装兵「いい加減にしろッ!」
兵士「うおっ!」
女重装兵「私はもう行くぞ!」ガションガション
兵士(実によかった……)
兵士「いやー、今日の戦いもハードだったな」
友人「ああ、だけどもう少しの辛抱だ」
兵士「敵軍の最後のあがきってところだな。……あ」
女重装兵「なんだ」
兵士「今から兜脱ぐのか? だったら脱ぐ瞬間を見せてくれ!」
女重装兵「またか……ほら」ガポッ
兵士「う~ん、いい……」
兵士「俺さ、重い鎧つけた兵士が兜脱いだら女の子が出てくるってのに弱いんだよね」
友人「はぁ」
兵士「分かるだろ? ゴツイ鎧から可愛い女の子が出てくるギャップ……みたいなさ」
友人「悪い、俺にはよく分からん」
兵士「なんで分かんねえんだよ~!」
女重装兵「……」
女重装兵(私にもよく分からなかったが、あいつは鎧から女の子が出てくるのが好きなのか)
女重装兵(ということは……)
ヌギヌギ…
女「これでよし」
女「重い鎧をつけてないこの状態の私が会いに行ったら、もっと喜んでくれるはずだ!」
兵士「ん」
女「鎧を脱いでみたんだ」
兵士「ああ、重装備してないお前を見るのはなんだか新鮮だな」
女「どうだ?」
兵士「どうって?」
女「私の普段着姿はどうだ?」
兵士「ん、ああ、だから新鮮だなって」
女「……」
兵士「それだけ」
女「もっとこう、他にないのか?」
兵士「他って?」
女「あるだろ……!」
兵士「ん。ああ……こうして見るとお前も細身ながらがっしりしてるな。重装兵やってるだけあるよ。すごい」
女「……ッ!」
兵士「なんだあいつ……」
友人「あーあ、怒らせちまった」
兵士「は?」
友人「お前って奴は女心を分かってねえなぁ。あれじゃ怒るに決まってる」
兵士「なんで?」
友人「お前、ゴツイ鎧から女の子が出てくるのが……っていったろ? だから彼女はきっと……」
兵士「……あ」
女「待たない!」タタタッ
兵士「待てって!」タタタッ
女「待たない!」タタタッ
兵士「今のお前、とっても可愛いよ!」タタタッ
女「お世辞なんかいらない!」タタタッ
兵士(足はえーな! 身軽になるとこんなに速かったのか……!)
タタタタタッ…
友人「あーあ、嫌われたな」
兵士「うっさい」
友人「数少ないガールフレンドだったのに残念だな」
兵士「うっさい」
――――
――
兵士「ぐぅ、ぐぅ、ぐぅ……」
ガション… ガション…
兵士「ん?」
ガション… ガション…
兵士「なんだ……?」
女重装兵「起きろ」
兵士「うわっ!? なんでここに!?」
女重装兵「静かにしろ。みんなが起きてしまう」
女重装兵「……」
兵士(まさか、昼間の恨みで俺を殺しに……!?)
兵士「や、やる気か……」
女重装兵「ああ、やる気だ」
兵士「やっぱり……! ええい、ひと思いにやってくれ!」
女重装兵「分かった」
兵士「え?」
女重装兵「もう一回」ガポッ
兵士「え? え?」
女重装兵「お前はこれが好きなんだろ。昼間はガッカリさせちゃったから、これを見せにきたんだ」
女重装兵「だから……今日は思う存分やってやる」
兵士「お前……」
兵士「おおっ!」
女重装兵「ほれ」ガポッ
兵士「いい……!」
女重装兵「もう一回」ガポッ
兵士「グレイト!」
兵士「ありがとよ。わざわざ俺のために……」
女重装兵「私が勝手にやってることだ。なんなら注文をつけてもいいぞ」
兵士(注文……!)
兵士「んじゃ、全力で注文させてもらう」
女重装兵「来い」
兵士「兜脱ぐ瞬間、『ふうっ』っていってくんない?」
女重装兵「分かった」
女重装兵「ふうっ」ガポッ
兵士「いい! すごくいい! 全身がキュンときた!」
女重装兵「そ、そうか」
女重装兵「やってみる」
女重装兵「ふうっ」ガポッ ファサッ…
兵士「ああ~たまらん! こんな鎧つけてるけど女なのよって感じがたまらん!」
女重装兵「他には?」
兵士「じゃあさじゃあさ、もっと汗をきらめかせて欲しい!」
女重装兵「汗ね……わざとかくのは難しいが……」
女重装兵「ふうっ……」ガポッ ファサッ…
キラキラキラ…
兵士(ゴツイ兜を取ったら女の子が出てきて、爽やかに髪をなびかせ汗をきらめかせる……)
兵士「んほぉ~、たまんねぇ~!」
女重装兵「そんなによかったか」
兵士「ありがとう……! ありがとう……! 一生の思い出が出来た……!」
女重装兵「私もだ。こんな夜に鎧をつけたかいがあった」
隊長「出撃だ! 敵はもうまもなく撤退するはずだ! ここが踏ん張りどころだぞ!」
兵士「はいっ!」
友人「はいっ!」
兵士「んじゃ行ってくる。死ぬなよ」
女重装兵「お前もな」
友人「あれ? どうやって仲直りしたんだよ」
兵士「ん、まあ……ちょっと夜にな……」
友人「夜!? ちくしょう、羨ましい!」
兵士「はぁ、はぁ……よし、今日も俺たちが優勢だ!」
友人「ざまあみろだぜ!」
兵士「ああ、もう奴らは撤退するしかないはず!」
味方兵「大変だーっ!」
兵士「ん?」
友人「血相変えてどうした?」
兵士「なっ!?」
友人「マジかよ!」
兵士「くっ!」ダッ
友人「おい、どこ行く気だよ!」
兵士「決まってる、助けに行くんだ!」
友人「助け!? 無茶いうな! 敵軍の真っただ中に飛び込むようなもんだ!」
友人「大丈夫だ、もう敵にとっちゃ負け戦なんだ。捕虜に無茶な扱いはしねえだろ」
兵士「逆だ! ヤケクソになってあいつに何するか分からないだろ!」
友人「だがよ……!」
兵士「くそっ、無事でいてくれよ!」
敵兵B「重装兵を捕えてみたら、まさか女だったとはな……」
女重装兵「くっ……!」
敵兵A「どうせこの戦いはもう俺たちの負けなんだ。この女でたっぷり楽しもうぜぇ!」
敵兵B「おう! せめて捕虜で憂さ晴らししねえとな!」
女重装兵(こんな奴らに汚されるぐらいなら死を選ぶ……)
女重装兵(だが……もう一度兵士に会いたい。なにか……なにか手はないか)
女重装兵「!」ハッ
敵兵A「ん?」
女重装兵「そんなに楽しみたいなら、たっぷり楽しませてやる」
敵兵B「おお、ずいぶん積極的な捕虜じゃんか」
女重装兵「ただ、こんな身動きも取れない状態ではそれもできない」
女重装兵「どうか私の手足を自由にし、兜をつけさせてくれないか?」
敵兵A「……」
敵兵A「いいだろ。暴れたって無駄だしな」
敵兵B「むしろ暴れて欲しいぐらいだぜぇ! 抵抗される方が興奮するんでな!」
女重装兵「……ありがたい」
敵兵B「で、どうやって俺らを楽しませてくれるんだい?」
女重装兵「……」
女重装兵(これが私があの夜に身に付けた、渾身の――)
女重装兵「ふうっ……」ガポッ ファサッ…
キラキラキラ…
敵兵A「えっ……!」
敵兵B「あっ……!」
敵兵B「いい年して初恋みたいにときめいちゃった……」
女重装兵(今だっ! 鎧を脱いで――)
女「逃げるっ!!!」タタタタタッ
敵兵A「あっ、コラ!」
敵兵B「待て!」
敵兵A「でもドキドキが止まらなくて……」ドキドキ
敵兵B「追いかけられない……」キュンッ
女「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
女「あっ!」
兵士「おーい!」
女「兵士!」
兵士「よかった、無事だったか!」
女「ああ、何とか脱出できた! お前に教わった芸と、足の速さのおかげでな!」
兵士「(俺に教わった芸?)そ、そうか」
兵士「?」
女「もう少しで危ないところだった……怖かったよ……! 来てくれてありがとう……!」ギュッ
兵士「お、おう」
兵士「……」
女「どうした? ニヤニヤして……」
兵士「あ、いや……鎧脱いでる状態のお前もいいな、と思っちゃってさ」
女「……バカ」
END
乙
感動した
乙
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